M&A仲介業界の転職失敗事例集

M&A仲介会社への就職は厳しいですから、入社が決定した時の喜びは大きいです。ただ、入社後に後悔する人が一定数いるのも事実。ここでは、M&A仲介への就職で失敗事例を紹介しています。

M&A仲介業界の転職失敗事例

思ったよりも年収が上がらない

M&A仲介の仕事は、他の職種に比べて年収が高いイメージが強いですが、それはインセンティブ制によるものです。仕事の成果に応じて報酬が得られるので、結果を出せば出すだけ報酬は上がる実力主義の世界。逆に結果を出せないままだと基本給しかもらえません。

M&A仲介での基本給はそれほど高くないので、思うように成果を得られない場合では年収は低いまま。思っていたよりも年収が上がらないと気落ちしてしまう事もあります。

失敗事例の補足

世の中には成果報酬型の仕事が多くありますが、これらは依頼者側・雇用主側が必要以上に固定費を抱えなくていいようにしているリスクヘッジです。高い収益を獲得できた場合には一定のコストを支払いますが、原資となる収益が上がらない場合には支払う金額を抑え少しでも利益を確保するための報酬体系です。

M&A業界は成約することによって多額の報酬を受領することができるビジネスモデルがスタンダードになっていることからインセンティブ割合が多い報酬体系にならざるを得ません。高い年収を獲得するためにはきちんと案件をクロージングまで持っていけるよう少しでも早く業務についてキャッチアップすることと、自ら具体的なノルマ設定をし達成するためにとにかく努力することが必要です。

M&A案件を成立させるのが難しい

M&Aでは、クライアントの相談から適したM&Aの提案をおこないます。ただ、相談からM&Aにまで必ずしも進むとは限りません。しかも、M&Aとして進めることができたとしても、経営者が途中で「やっぱり売りたくない」と思い直し案件が中断することもあります。M&Aにまでこぎつけるのも大変ですが、続けるのも簡単ではないため、途中で心が折れてしまう人も少なくありません。

失敗事例の補足

M&A業界におけるターゲットは売り手・買い手の両方になります。案件を成立させるためには売り案件の獲得・買い手の模索やマッチング・条件面のすり合わせ・両社の合意と多くのプロセスを経なければいけません。それぞれのプロセスで時間がかかってしまうと、売り手・買い手ともに気持ちや方針が変わってしまい、「やっぱりやめます」となってしまう可能性もあります。

時間をかけて案件対応したにも関わらず成立に至らないという状況になるとそれまでの努力が無駄になってしまうため、入り口段階できちんと顧客のニーズを把握しておくこと・売り手や買い手とのコミュニケーションを積極的に取り信頼関係を築き上げておくことなどが欠かせません。

想像以上にハードワークだった

M&A仲介業でも働き方改革が進められていますが、動くお金や規模が大きい為、顧客との商談や関係者各位との調整、企業分析などの各種リサーチ、売り込むための訪問や資料作りなどハードワークなのは変わりません。案件によっては学びが必要になることも。

しかも、案件を獲得しないことにはインセンティブが得られないため、必要以上に頑張りすぎてしまいオーバーワークになることも。プレッシャーも相当ですから、心身ともに疲弊してしまう方もいます。

失敗事例の補足

M&Aは金額の大きな案件を取り扱いますし、売り手・買い手のどちらにとっても大きな意味を持つプロジェクトであることがほとんどです。また、窓口や担当として関わる相手は経営幹部や経営者であることも多いため、時間や曜日にとらわれることなく対応する必要があるでしょう。さらにM&A案件を成約させるためにはスピード感も重要であることから、案件対応中はかなりの激務にならざるを得ません。こういった忙しい時間の中で分析や資料作成・交渉などレベルの高い業務をこなさなければならないため、適度に息抜きをする・自分の中で何らかのストレス解消方法を持っておくなど、メンタルコントロールについても考えておく必要があるでしょう。

環境の変化

ハードなM&A仲介業も、独身で自由に動ける身であれば、思う存分に仕事に没頭できますが、結婚や出産など家庭環境が変わることで厳しくなることもあります。

近年では共働きは普通であり、そうでなくても男性も積極的な育児参加が言われています。子育てのサポートや、家族の時間を確保するのがM&A仲介業では難しいと感じることもあるようです。

失敗事例の補足

人生を過ごしていく中において、家庭環境に変化が生じることは誰にでも起こり得ます。そういった場合にはひたすら仕事に打ち込むということが難しくなる可能性がありますが、周りのチームメンバーや上司などの支えを受けることによってワークライフバランスを整えることもできるでしょう。そのためには転職段階においてそういったサポートが受けられる職場環境かどうかを確認しておく必要があります。産休や育休の取得実績はどうか・有給取得率はどうかなど、職場における「働きやすさ」を定量的に測ることができる指標を意識して質問してみるとよいでしょう。もしくは実家のサポートが受けられる環境を用意するなど、家庭側の環境や状況を調整することも考えられます。

テレアポがきつい

未経験でM&A仲介業に入った場合、譲渡企業へのテレアポから始まります。1日に何百件と電話をかけるのに、受付から社長などの上役に繋がるのはほんの少し。社長がでてきても断られることも少なくありません。精神的に疲れてしまい、M&A仲介業に馴染む前に辞めてしまう方も。

失敗事例の補足

今でこそ世の中にある程度「M&A」という言葉が浸透するようになりましたが、以前は買収や身売りなどのようなネガティブな捉え方をされることがほとんどでした。今でもそういったマイナスイメージを持っている方が多くいることから、M&A業界におけるテレアポは煙たがられることが少なくありません。しかし一方で事業承継などの悩みを抱えている企業からすると廃業以外の選択肢を増やすことができるわけですので、社会的意義の大きな仕事でもあります。自分の中でモチベーションの持ち方を決めてひたすらこなすとよいですが、どうしてもテレアポなどの営業に抵抗がある場合には営業と案件対応の部門が分かれているようなM&A仲介会社に転職するのがよいでしょう。

人間関係・社風とのミスマッチ

転職後に仕事が続けられるかどうかは、仕事そのものの内容もさることながら会社・職場とマッチするかどうかも非常に重要なポイントです。上司や同僚との相性は問題ないか、社風が自分の考えやスタイルと合致するかなど、定性的な面が中心になるでしょう。具体的な例としてはいわゆる「体育会系」の厳しい企業文化であるケースや責任をすべて担当者に課せられフォロー体制が全くない環境であるケースなどが考えられ、うまくなじめずに早期退職となってしまう可能性もあります。入社前に企業文化や企業風土を見極めることは非常に難しいですが、OBやOGに対するインタビュー・口コミやSNSなどで情報収集を行うなど可能な限り多くの判断材料を集め、冷静に分析するようにしましょう。

教育・研修制度の不備

未経験の業界へ飛び込む場合、どういった教育・研修環境でキャリアを積み上げられるかは非常に重要です。何も教えられることなくただ現場に行かされたとしてもできることはありませんし、そういった環境であれば成長するための経験を積むこともできません。特に規模が小さい会社や教育体制が整備されていない会社の場合、仕事を教えてくれるはずのスタッフがプレイヤーとして忙しく、顧客対応や案件対応に時間を取られた結果放置されてしまい一切スキルアップできない、という状況に陥ってしまう可能性があります。

M&A業界はより多くの案件に触れることで経験値を積み重ねることができますので、チームとして案件に対応する中においてOJTで実践的に学べる・先輩や上司がサポートしてくれる体制が整っているとよいでしょう。

「M&A転職の『失敗』を回避する！具体的な情報収集と見極め方」

未経験の業界へ転職することは大きな決断です。いざ飛び込んでから「こんなはずじゃなかった」という状況に陥らないためにも、徹底した事前の情報収集と冷静な自己分析を行い、企業をしっかりと見極めるためのアクションを考えましょう。

求人情報・会社HPだけでは分からない！リアルな情報収集術

求人情報は企業側からの一方的な情報提供ですので、「企業がアピールしたいポイント」だけが記載されることになります。企業のホームページも同様で、魅力としてアピールしたい要素だけを掲載していますので、その実態までを確認することは難しいでしょう。

そういった場合、さまざまな方法で企業の実態についてのリアルな情報収集を行うことが考えられます。具体的な例としては複数の転職エージェントを利用して幅広く企業の評判を収集したり転職者の勤続状況について確認することが挙げられます。他にも口コミサイトやSNSを閲覧・調査することも有効ですが、インターネット上にはフェイク情報も多くまん延していますので情報の真偽については十分見極める必要があります。さらに企業説明会への参加、面接場面において報酬体系や働き方・離職率などといったコアな質問を投げかけてみるのもよいでしょう。こういった聞きにくい・回答しにくい質問に対してどう真摯に向き合ってくれるかも判断基準の一つになり得ます。

「キラキラ」の裏側も見る！企業選びの重要チェックポイント

「アットホームな職場です」「働きやすい環境です」「ワークライフバランスを推進しています」などといった魅力的な文言の求人を目にしたことがある方は多くいらっしゃるのではないでしょうか。M&A業界ではこういった職場環境のアピールに加えて「高収入」などの魅力を全面に押し出して求人募集を行っていることがあります。しかしこれらはあくまでも表面上の求人情報であり、いざ入社してみると「思っていたのと違う」という状況に陥ってしまう恐れがあります。

例えば収入面であれば高収入の裏には残業や休日出勤・インセンティブ割合の高さなどが隠れていたり、フレックスや在宅勤務を活用しようにも案件が忙しくそんな暇が取れないなど魅力的な求人情報の内容が実際には実現できない可能性も少なくありません。他にも教育・研修制度や企業文化・社風、コンプライアンス意識など、さまざまな観点から企業に対する評価を行い転職するかどうかを検討するようにしましょう。

自分は本当に向いている？冷静な自己分析と覚悟

仕事を続けるためには収入ややりがいなどさまざまな要素が欠かせません。転職活動を行うにあたっては、自分が仕事に対してどういったモチベーションを持つのかをしっかりと認識・理解するようにしましょう。特に未経験からM&A業界への転職は大きく業務環境が変わる事になるでしょうから、肉体的な疲労・精神的なストレスが発生するという覚悟を持っておく必要があります。

改めて「なぜM&A業界に転職しようと思ったのか？」「激務の環境やプレッシャーに対する耐性はあるか？」「成果が出ない期間もモチベーションを維持し続けられるか？」「泥臭い営業努力を重ねられるか？」「常に学ぶ意欲を持ち続けられるか？」など、さまざまな自己分析・確認を冷静に行うようにしましょう。これらの自己チェックを経てもなお転職する意思が揺るぎないものであるならば、その覚悟をもってM&A業界に飛び込み積極的にチャレンジしてみるとよいでしょう。

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