M&A業界に必要な英語力はどのくらい？

この記事では、未経験からM&A業界を目指す方に向けて、必要な英語力のレベルやキャリアパス、そして成功のポイントを詳しく解説します。

M&A業界への転職に英語力は必須？

M&A業界における英語力の必要性は、携わる案件の種類によって大きく異なります。そのため、必ずしも必要ではありません。

英語力の重要性が際立つのは、海外企業が関わる「クロスボーダー案件」です。企業の海外進出や事業のグローバル展開が活発になるにつれて、クロスボーダーM&Aの件数は増加傾向にあり、英語を使いこなせる人材の需要は年々高まっています。このような案件では、コミュニケーションの手段が英語になるため、高い英語力が不可欠と言えるでしょう。

一方で、国内企業同士のM&Aが中心であれば、英語力が直接的に求められる場面は限定的かもしれません。しかし、企業のIR情報や最新の市場動向を海外の資料から収集する際など、間接的に英語力が必要となる場面は存在します。

英語力が求められる具体的な業務シーン

クロスボーダーM&Aのプロセスでは、さまざまな場面で実践的な英語力が求められます。例えば、買収対象企業の価値やリスクを調査するデューデリジェンス（DD）の段階では、海外企業の財務諸表や契約書といった膨大な資料を英語で読み解く必要があります。

また、現地の会計士や弁護士などの専門家と英語でコミュニケーションを取り、情報を正確に把握しなければなりません。交渉段階に入ると、英文契約書の内容を精査し、相手方の担当者と条件面での折衝を英語で行います。

ここでは、法務や財務に関する専門用語を理解し、自社の意図を的確に伝える高度な語学力が成功の鍵を握ります。電話会議やメール、現地でのミーティングなど、円滑なディール進行のために、日常的にビジネスレベルの英語コミュニケーション能力が必須となるのです。

求められる英語力のレベルとは？

M&A業界、特にクロスボーダー案件を扱うポジションで求められる英語力は、一般的に「ビジネスレベル以上」とされています。

転職市場で英語力を示す指標として広く使われるTOEICスコアで言えば、860点以上が一つの目安となるでしょう。このレベルは、専門外の分野についても理解でき、ネイティブスピーカーとスムーズに議論ができる能力に相当します。

ただし、単にスコアが高いだけでなく、実際のビジネスシーンで使える実践的なスキルがより重視されます。

特に、複雑な契約内容や交渉のニュアンスを正確に理解し、自身の意見を論理的に主張できるスピーキング能力やライティング能力は極めて重要です。求人によってはTOEIC900点以上を要件とする場合もあり、高い英語力は間違いなく大きなアドバンテージとなるでしょう。

英語力を活かせるM&A関連のキャリアパス

高い英語力を持つ人材は、M&A業界において多様なキャリアを築くことが可能です。それぞれの職種で専門性や役割は異なりますが、グローバルな舞台で活躍できるという共通の魅力があります。自身のスキルや経験、キャリアプランに合わせた道を選ぶことが大切です。

M&Aアドバイザリー・コンサルティングファーム（FAS）

FAS（Financial Advisory Services）は、企業の財務に関する高度な専門知識を活かし、M&A戦略の立案から実行までを一貫して支援するプロフェッショナル集団です。特にクロスボーダー案件の増加に伴い、英語力のある人材の需要が高まっています。

海外のクライアントや買収対象企業との交渉、海外拠点のチームとの連携、英文での報告書作成など、業務のあらゆる場面で英語力が活かされます。財務分析や企業価値評価といった専門知識に加え、高い英語力があれば、大規模で複雑な国際案件に携わるチャンスが広がるでしょう。

投資銀行・証券会社

投資銀行や証券会社のM&A部門は、主に大企業が関わる大規模な案件を取り扱います。グローバルに展開する企業が多いため、ニューヨークやロンドン、香港といった海外オフィスのチームと連携しながらプロジェクトを進めるのが一般的です。

そのため、社内公用語が英語であったり、日常的に英語での電話会議やメールのやり取りが発生したりと、英語力がなければ業務を遂行することが困難な環境です。世界経済の動向に直結するダイナミックな環境で、自身の英語力を最大限に発揮したい方にとって、魅力的なキャリアパスと言えるでしょう。

M&A仲介会社

M&A仲介会社は、主に中堅・中小企業の事業承継問題などを解決するため、M&Aのマッチングを支援します。これまでは国内案件が中心でしたが、近年では後継者不足の解決策として、海外企業へ事業を譲渡するクロスボーダー案件も増加中です。

海外の買い手候補企業へのアプローチや、海外投資家とのコミュニケーションにおいて、英語力は大きな武器となります。企業の存続と成長に直接貢献できる社会的意義の大きい仕事であり、英語力を活かして活躍のフィールドを広げることが可能です。

PEファンド・ベンチャーキャピタル

PE（プライベート・エクイティ）ファンドやベンチャーキャピタルは、企業に投資し、経営に積極的に関与することで企業価値を高め、最終的に株式を売却して利益を得ることを目的としています。

投資先の海外展開を支援したり、海外の企業を買収して投資先と統合したりする際に、英語での交渉力やリサーチ能力が不可欠です。投資という側面から企業の成長に深く関与し、自身の英語力をダイレクトにビジネスの成果に繋げたいという志向を持つ方に適したキャリアと言えるでしょう。

未経験からM&A転職を成功させるポイント

M&A業界は専門性が高い領域ですが、未経験者にも門戸が開かれています。ただし、英語力だけで転職が成功するわけではありません。これまでのキャリアで培ったスキルや経験を効果的にアピールし、入社後に活躍できるポテンシャルを示すことが重要です。

英語力以外にアピールすべきスキル・経験

M&Aの実務では、財務・法務・税務といった専門知識が不可欠です。そのため、公認会計士や税理士、弁護士といった資格はもちろん、日商簿記2級以上の会計知識は大きなアピールポイントになります。

また、クライアントとの関係構築や交渉が業務の中心となるため、法人営業やコンサルティングの経験で培った高いコミュニケーション能力や課題解決能力も高く評価されます。特定の業界に関する深い知見も、その業界のM&A案件において強みとなるでしょう。

何よりも、常に変化する市場や法制度を学び続ける高い学習意欲と、激務に耐えうるストレス耐性が求められます。

まずは情報収集から始めよう

未経験からM&A業界への転職を成功させるためには、入念な準備が欠かせません。まずは、業界の動向や各社の特徴を深く理解することが第一歩です。

M&A業界に特化した転職エージェントは、非公開求人を含めた豊富な情報を持っており、専門的な視点からキャリア相談に乗ってくれるため、積極的に活用することをお勧めします。

また、セミナーや勉強会に参加し、業界で働く人々とネットワークを築くことも有益です。自身のこれまでのキャリアを振り返り、どのようなスキルや経験がM&A業界で活かせるのかを整理し、説得力のある職務経歴書や面接でのアピールに繋げることが、成功への近道となるでしょう。

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